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CIAは外国での諜報にかかわる活動を、FBI(FederalBureauofInvestigation米国連邦捜査局)が米国内の諜報に関連する活動を担当することになっているが、N政権時代のウォーターゲート事件からCIAが国内でも活動していたことが露見し、国の内外で大問題となり、議会の厳しい監視下に置かれることになった。
しかし、「国家安全保障」というのはsacredcow(聖なる牛)、つまり手をつけてはいけないものなのであって、その後も折にふれいろんな問題が報じられる。
たとえば、1994年2月には、CIAの幹部でありながら、過去10年間にわたってソ連のスパイとなり、夫婦でソ連から250万ドルを受け取っていたOとRが逮捕され、CIAのずさんな管理体制が問われたし、優秀な女性幹部の登用を妨害したとして、CIAの男性社会の体質に強い批判が投げかけられた。
ところでCIAは数ある米国の諜報機関(全部で10以上もある)のひとつに過ぎない。
米国の諜報活動全体の年間予算は1998会計年度で267億ドル。
最近のベトナムのGNPよりも少し大きい規模だ。
CIAはそのうちの1割強を占めるとされている。
形の上では空軍のなかにあるが、偵察衛星による活動を取り仕切るNRO(NationalReconnaissanceOffice国家偵察局)や、通信情報を集め分析する国防総省内のNSA(NationalSecurityAgency国家安全保障局)などのハイテク・スパイ組織が、世間からあまり知られないまま、重要な役割を演じているのだ。
諜報の世界もまたacronym(頭字語)やinitialism(頭文字の略語)が幅を利かすところである。
B大統領時代のCIA長官だったRが1991年秋、上院で指名承認のための公聴会で証言した時、N紙は証言録を大きく紙面に掲載し、それとともに証言中にふんだんにでてきた略語を特集した。
そこにはDCI(DirectorofCentralIntelligenceCIA長官)、NSA(国家安全保障局)など15の略語が説明されていたが、これをみると、スパイの世界がいかに自分たちの間でだけ通用する言葉が好きかがわかる。
だがそれより重要なのは、冷戦が終わって、CIAもFBIも、あるいはまたNSAも、米国にとっての「敵」がいなくなったことだ。
そこでCIAは経済・貿易に新しい仕事の対象をみつけようとしていると報じられている。
1995年にはフランス政府がパリの米国大使館内で外交官として働いていたCIAの要員らに圏外退去を求めたことがあった。
彼らは産業スパイを働いていた、というのがフランス政府の言い分だったが、サウジアラビアでの航空機売り込み合戦で、フランスの企業が米国に負けたのはCIAのためだったと報じられた。
こうしたindustrialespionage(産業スパイ)が日米貿易摩擦にもかかわってくる、あるいはすでにかかわっているのではないか1995年7月23日付のL紙は1面トップで、6月末に日米間でなんとか妥結した自動車摩擦の交渉の過程でも、CIAが日本側から貴重な情報を仕入れて、米国の交渉の責任者だったM通商代表を喜ばせた、という日本にとっては聞き捨てならないニュースを報じていた。
CIAの諜報活動の内容は具体的には報じられていないが、C大統領が冷戦後のCIAの活動として経済問題に優先順位をおくようにとの極秘の指示をだした結果だと同紙は報じている。
実際にその後も経済諜報の報道が折にふれ報じられ、冷戦後になってスパイの活動分野が広がったのは皮肉なことである。
ベルリンの壁が崩れソビエト連邦が崩壊した後、イデオロギー上の強力な敵を失ったアメリカの諜報機闘が経済スパイに向かうのではないかとみられる時期があった。
1990年代の初め、アメリカはR政権時代の財政、貿易面での「双子の赤字」の後遺症に悩んでいた。
経済が活況をみせたのは1990年代の後半になってからである。
当時S元CIA長官は外交雑誌Fに経済スパイの強化を勧めたし、タイム誌は1993年2月22日号でCIAの今後、産業スパイヘリという特集を組んでいる。
実際にどのようなことがあったのか。
アメリカの産業スパイについては欧州を中心に大きな問題となっていた。
そして1998年1月、欧州議会はAnAppraisalofTechnologiesofPoliticalControl(政治的コントロールのテクノロジーに関する評価)という報告を公表した。
この報告ではアメリカがイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの諜報機関と手を組んでEchelon(エシュロン)という暗号名の通信傍聴システムを作り上げ、この10年ほど、NSA(国家安全保障局)の管理の下、電話、ファクスからE-mailにいたるまで多くの通信を盗聴し、その内容をアメリカの企業などに利用させていたとの報告を発表した。
エシュロンとはもともとフランス語の「階段」だが、英語でも「(飛行機の)梯形編成、(指揮命令の)段階」という意味で使われている。
エシュロンは、1947年にアメリカとイギリスとの間でスタートした通信傍受面での協力体制が発展したもので、1970年代に残る3カ国が加わったという。
1日20万件に及ぶ盗聴された電話通信は、必要に応じて「爆発」とか「テロ」といったキーワードを基にして選別され、さらに詳しく追跡されることになっているという。
こうしてみるとテロ対策に利用されている部分が多いと考えられる。
アメリカ政府もエシュロンが経済スパイを行うためのものではないと否定しているが、こうした盗聴システムにもっとも強く反発しているフランスは自前の盗聴システムをフランス領ニューカレドニアに築いたという。
冷戦後のスパイ・システムのエシュロンは21世紀になっても大いに話題をにぎわしそうである。
冷戦華やかなりしころのこと。
R大統領がソ連をtheEvilEmpire(悪魔の帝国)と呼び、米ソ超大国が軍拡にしのぎを削っていた1982年10月、国務省がソ連による対西側宣伝工作に関する報告書を発表したことがあった。
そこには、ソ連が偽文書をばらまき、disinformationを行い、時には脅迫までして、西欧諸国の米国に対する信頼感を打ち壊そうとした、といった激しい非難が盛られていた。
当時、西欧諸国での核戦力を強化しようという計画があり、ヨーロッパ国民の問では、その動きに対して強い不安が高まっている時であった。
このdisinformation、今では少し詳しい英和辞書なら、たとえばi(敵側に流す)偽情報、逆情報」という形で扱われていて、英語として認知されているが、1980年代初めにはまだ辞書には載っていなかった言葉だ。
実はこの言葉はロシア語のdezinformatsiyaから英語に取り入れられたものである。
国務省は前述の報告書をだした後も、米政府の機密文書として出回っている文書のうちKGBが作成した疑いが強いものがある、といった発表をしたことがある(1986年8月29日)。
スパイ映画を見るまでもなく、冷戦期の米ソのスパイ合戦は目を奪うものがあった。
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